プロジェクトを操縦する2

id:juratena:20070313
プロジェクトリーダーのK氏は優秀だ。前回、前々回の各プロジェクトにおいての彼の功績は少なくなかったといえる。緻密な計算、綿密な裏づけ調査、最適解の導出、解のための環境や条件の設定など細やかな仕事ぶりで我々一次コントラクタだけでなくお客様の信頼も厚かった。プロジェクトマネジメント領域においても彼の才能は発揮されていた。彼の意見を参考にした者も多かったし、皆彼に感謝し頼りにしていた。彼が主体的な責任を持つ立場になるまでは。
過去のプロジェクトにおいては、彼は雇われの身だった。プロジェクトリーダーの指示を受け、または権限の委譲を受け作業を行う身分だった。作業自体は彼の才能を引き出す代物だったが、契約の形態や立ち位置からオプションは制限されていたし、なにより責任を(直接的には)負うことはなかった。我々(私を含む)の誰かがプロジェクトリーダーの責務を負い、その参謀役であったり、代理的なリーダ職を務める身でしかなかった。そのことを彼も彼の会社も我々も理解できていなかったのだろう。そのツケを今我々が払わされることになるのか・・・。
元々、K氏は我々の組織の初期プロジェクトに、プログラマ傭兵部隊として参画したハケンのプログラマだった。そのプロジェクトでの働きぶりを買われ、二次コントラクタD社に中途採用された。その後、そのD社の責任者に認められ、あれよあれよという間についに一括請負のリーダーを任されるまでになった。ここ数年の話である。
当時から彼はかなりのセンスを持っていたと思われる。プログラマ専任時代にも最も難易度の高いプログラムを担当した。もっとも難しいプログラムであるにも関わらずもっとも劣った設計者が担当してしまったこともあって、その苦労は更に倍増した(恥ずかしながらその設計者とはウチの人間で、彼は後にプロジェクトリーダーに任命されプロジェクトを成功させた)。普通であればそのボンクラ設計者とヤリあって管理側が仲裁に入って・・・といった状況になるのだが、彼は一味違った。そのボンクラ設計者をなだめすかしながら設計の精度とプログラムの精度を同時に向上させたのだ(後にこのことは、件のボンクラ設計者の功績があったことがわかることになる)。その一件以来、彼は当組織で一目を置かれる存在となった。