[椿]

なくなって一月、まだ、その名前を声にだすことができません。実際、いなくなったので声に出す必要はないですし、読んだところでどうだということはないのですが、その名前を言うことに非常に強い抵抗があります。
あたりまえですが、声に出しても彼女はもうここにはいないからです。その名前を声にだすといつも彼女は走ってきました。でもいまはそうはならない。それは頭ではわかっているのですが、現実として再確認をしたくはないのです。だから、彼女の話は、今はまだできないのです。